雪椿酒造(株)
厳しい冬に耐え、春には美しい花が咲く「ユキツバキ」の姿を酒造りの理想としたいという思いが込められています。
1000石~1500石という規模で昔ながらの手造りの技を守り、高品質の純米酒に限定した酒造りを行っているユニークな酒蔵です。
周囲の自然と環境
雪椿酒造がある加茂市は三方を山に囲まれています。
酒蔵は加茂の中心通りに位置し、東に粟ヶ岳、西には弥彦山を眺望できる風光明媚な場所です。
その南東部にある粟ヶ岳は標高1,293mの山で、日本三百名山の一つとして数えられています。
その山を水源に、町のシンボルとなっている加茂川が形成されています。
この川は町の中心部を流れており、町のシンボルとなっています。
水中にはギンブナやウグイのほか、メダカやアカザといった日本古来の魚類が生息している非常にきれいな河川です。
川の周囲は、河川改修により川幅が広げられ、河川敷には公園や花壇が整備されています。
毎年、夏にこの河川敷で夏祭りが行われる他、子供の日が近づくと大量の鯉のぼりが河川に並ぶイベントが有名となっています。
春の加茂川沿いに並ぶ500匹の鯉のぼりは圧巻で、家族連れなどでゆっくり堪能できます。
そんな加茂市の起源は平安時代に遡ります。
青海神社の鳥居前町として栄えたのが町の起源と言われています。
町の中心には青梅神社がありますが、西暦927年もの昔に建立された歴史ある建物です。
平安時代にさかのぼるとこの土地は、京都の賀茂神社の領地となっていました。
京都の上賀茂神社と下賀茂神社の祭神が分霊されたことから、「加茂」と呼ばれるようになりました。
このように古くから京都との関わりがあった事で由緒ある神社や寺院の多い事や、中心街の落ち着いた町並みから「越後の小京都」とも呼ばれる情緒ある町なのです。
新潟県のシンボルの樹木「雪椿」
この蔵の創業は1806年に丸若酒造として酒造りを始めました。
「雪椿」は、1967年「ユキツバキ」が県の木に指定されたことを記念して名付けられました。
加茂市は、新潟県を代表する樹木である「ユキツバキ」の群生地として有名であったことに由来します。
日本海側の多雪地帯に分布し雪解けを待って咲くユキツバキは厳しい冬に耐え、雪解けとともに深紅の花を咲かせます。
この鮮烈なイメージを酒にも持たせたいという想いから、酒名を「雪椿」と名付けたそうです。
その後、1987年に「世界鷹小山家グループ」に加入します。
これにより蔵は、資金的に安定した酒造りができる体制となりました。
小山グループとは、埼玉県の小山酒造を中心とした酒蔵のグループです。
創業者の小山屋又兵衛は、1780年頃に灘・伊丹・伏見にて酒造りの技術を習得し、現在のさいたま市にて酒造業を開始しました。
1970年代からは、大量生産・営業の全国展開を開始しました。
その後、全国の清酒メーカーを合併・買収する形で発展し、世界鷹小山家グループとしてれ地域毎の技術を活かした分社経営を行っています。
2018年は全国第4位の酒造量を誇る最大手の清酒メーカーのひとつでもあります。
雪椿酒造はこのような大手の資本によって、高度な酒造りの技術をいちはやく導入することができたのです。
そんな雪椿酒造の大きな特徴と言えば純米酒だけを専門に造るところではないでしょうか。
この蔵は2011年に純米酒だけをつくるいわゆる「純米蔵」になりました。
その理由は、もともと純米吟醸酒や純米酒などの比率が8割以上と高かったことが挙げれます。
さらに純米酒造りに特化し、個性を出すことに専念をしたのでしょう。
手仕事の重要性を熟知
アルコール添加を行わない純米酒は、米の旨みがしっかりと感じられ、蔵の個性が出やすいと言われています。
ですから軽すぎず、重すぎず、調和がとれた味作りが必須となります。
そこで雪椿酒造がこだわったのは、何杯でも飲むことができる透明感のある「淡麗旨口」の純米酒を目指しました。
それには、手仕事を中心とした酒造りが必要だと彼らは言います。
資金的な余裕があった雪椿酒造は、全て機械化することも可能であったでしょう。
しかし、蔵に入ると、大勢の人たちが所狭しと作業をしている様子がわかります。
彼らは機械に頼りきらず、できる限り人の手で製造を行おうとしています。
特に原料処理は10㎏ずつ米を洗い限定吸水を行うほど手仕事を重視しています。
この酒米に水を吸わせる作業は、酒造りにおいて非常に重要です。
その後の工程である蒸米や麹作りに大きく影響するからです。
しかしこの給水作業は、酒米の種類や精米歩合によって大きく時間が異なります。
またその年の米の出来方によっても給水時間が変わってきます。
特に暑い日が続くと、高温障害がおこり米が割れやすくなるのです。
このように酒米とは非常にデリケートな原材料なのです。
雪椿酒造では、給水にサナ板付き浸漬タンクという手動の機械を導入しています。
この給水に使う特殊なタンクの中には、たくさん穴が空いたサナ板という板が付いた特殊な構造です。
これにより、一気に水に浸し、時間が着たら短時間で排水をすることができます。
また洗浄もしやすく、機械が常に清潔な状態を保てます。
機械と言っても人力で使用し、人の目は欠かせません。
さらに業界では、非常に画期的な発明と言われています。
雪椿酒造はこのような機械を使い、必ず人の手と目によって、米の状態に応じた給水作業を行います。
他にも人の手による重要さを熟知しています。
機械化した蔵では、連続蒸米機を使い、ベルトコンベアの要領で米を蒸します。
しかしこの蔵では蒸米作業は人手による「抜掛け法」で行います。
これは白米を甑の中に並べる方法の一つで、まず少量の白米を甑の中に平らに置き、蒸気が吹き抜けぬけるのを待って、さらに適量の白米を置くことを繰り返す方法です。
これにより機械ではできない、米の旨みが出るのだそうです。
製麹には10㎏盛りの麹箱を使い、これも機械ではなく人が作業を行っています。
必然的に造り手の連携は重要になり、和やかな雰囲気になるとのことです。
だから雪椿酒造はチームワークの取れた暖かい職場になるのです。
それらの努力もあって雪椿酒造は多くの賞を総なめにしています。
杜氏同氏がガチンコで闘うと言われている「越後流酒造技術選手権大会」首位になったこともあります。
「全国新酒鑑評会」で金賞、「関東信越国税局酒類鑑評会」で吟醸部門、純米部門ダブルで優秀賞。さらに2年連続の受賞などし、純米蔵として屈指の存在となりました。
雪椿酵母仕込みの酒
またこの酒蔵では「ユキツバキ」の花から採取した酵母を使用するなど、地域に寄り添った商品も開発しています。
蔵の裏手には加茂山公園があり、そこにはユキツバキが咲き乱れています。
この花の酵母で、社名にふさわしい酒が造れないものかと、2005年から酵母を探し始めました。
しかし花から酵母を採取できる確率は非常に低く、半ばあきらめていました。
3年が経過した時、偶然にも酵母を発見することができたようで「雪椿酵母仕込」の酒が誕生しました。
この雪椿の酵母は、発酵力が強く酸味がしっかりしたキレのいいお酒が誕生しました。
全国新酒鑑評会 | ||
平成21年5月 | 第97回 | 金賞 |
平成23年5月 | 第99回 | 金賞 |
平成24年5月 | 第100回 | 金賞 |
平成25年5月 | 第101回 | 入賞 |
平成26年5月 | 第102回 | 入賞 |
平成27年5月 | 第103回 | 金賞 |
平成28年5月 | 第104回 | 入賞 |
平成29年5月 | 第105回 | 金賞 |
平成30年5月 | 第106回 | 金賞 |
令和元年5月 | 第107回 | 金賞 |
関東信越国税局酒類鑑評会 | ||
平成20年11月 | 第79回 | 優秀賞 |
平成21年11月 | 第80回 | 優秀賞 |
平成24年11月 | 第83回 | 優秀賞 |
平成26年11月 | 第85回 | 優秀賞 |
平成27年11月 | 第86回 | 優秀賞 |
平成28年11月 | 第87回 | 優秀賞 |
平成29年11月 | 第88回 | 優秀賞 |
平成30年10月 | 第89回 | 優秀賞 |
令和元年10月 | 第90回 | 優秀賞 |
他にも多数受賞歴あり