ふじの井酒造(株)

地域 下越
代表銘柄 ふじの井
住所
新潟県新発田市藤塚浜1335  Gooleマップを見る
URL
http://www.sake-fujinoi.com

周囲の自然と環境

海岸線に沿うアカマツ林

新潟と村上を結ぶ国道の中程に、新潟砂丘と美しい赤松林に囲まれた景勝地があります。「藤塚浜」と呼ばれ、そこにふじの井酒造はあります。

新潟砂丘は北部の村上市から南部の角田山麓まで断続的に分布しており、総延長が70kmもあると言われ、鳥取砂丘の16kmを遥かにしのぎます。
この砂丘が排水の障害となったために、内陸側に湿原や「潟」と呼ばれる沼地が多く形成されました。
なかでも紫雲寺潟と呼ばれる大きな潟は、大雨のたびに大水害をおこし人々を困らせていたそうです。
ようやく1700年中期の江戸時代に、竹前権兵衛・小八郎の兄弟が潟の干拓を始めました。
彼らは7~8年をかけ、苦難の末に潟を切り崩し、その潟に溜まった水を海岸線に流すことに成功しました。
潟の干拓によって大きな田んぼと、数多くの村が生まれました。
川上の田んぼには大粒の米が育ち、精米小屋なども造られました。
また代官所ができたり、北前船が寄港する様になり、藤塚浜が次第に発展をしていきました。

干拓前には、潟に阻まれ山からの水が海に流れ出ず、この辺りには、良い水が出ないとされていました。
しかし干拓後は不思議なことに、新しい水脈が開けたのか、藤塚浜にはきれいな水が湧き出る井戸ができたんだそうです。
一説には汲んでも汲んでも尽きなかったこの井戸水は、「不二(不死)の井戸」と名付けられ神秘の井戸とされました。
近隣の住民にとっては、貴重な潤いの場であったといいます。

井戸は地下20メートルに及び、原水は朝日・飯豊連峰の伏流水とされています。
新潟・山形・福島に連なるこの大きな連峰は、高い標高を誇り非常に厳しい登山ルートになっています。積雪も多く、新潟・山形・福島の大事な水源となっています。
その山々からの水脈が100年以上の歳月をかけて藤塚浜にたどり着きます。
藤塚浜の砂地で自然ろ過された水は、口に含むとわずかに甘味を感じる軟水です。
不思議なことにこの水を使うと酒が旨くなると言われ、辛口でまろやかな味に仕上がると昔から言われていたそうです。

このような歴史から、藤塚浜に銘酒“ふじの井”が誕生しました。
丁度良く水路があり、米や酒を運ぶのに舟が活躍したのだそうです。
徳川末期頃に、田圃と水路を活用し、船主と地主と桶職人が酒造りを始めたともいわれています。

藤塚浜の大火

1886年(明治19年)、藤塚浜で大火があり全村500余世帯の集落は一夜にでほとんどを焼失しました。
この地帯は海岸線近くにあり、風も強い時があります。
当時は現在のように消防や建築法が整っていませんでした。
ですから、ほんの少しの火が一変に広がり、燃える家屋を前に、呆然とするしかなかったことでしょう。
もちろん酒蔵も全焼しました。
このため貴重な資料も無くなり、蔵の創業が果たしていつ、どのような歴史だったのか詳細は今ではわかりません。

しかし汲んでも尽きなかった「不二(不死)の井戸」と土蔵の蔵は焼け残りました。
一説には、蔵主がもし火災が起こった際に酒蔵を守るため、扉の隙間に味噌を塗り込んでいたとか。
現在でもこの土蔵の天井板には、生々しい猛火の焦跡が残されているそうです。

そこで酒蔵は、この火事をきっかけに再興することにしたのです。
現在の創業は公証1886年になっていますが、文章が残っておらず、実際はそのかなり以前より酒造りが行われていたと考えれています。

土蔵での酒造り

現在でも、藤塚浜の大火で焼け残った蔵は一号蔵として活躍しています。
その頑丈さは、火災だけでなく新潟地震のような大きな震度にも耐えてきました。
後年は大正蔵(二号蔵)昭和蔵(三号蔵)が建設されています。

酒蔵と言えば土蔵のイメージが強くありますが、現在土蔵を使用している蔵はあまり残っていません。
ほとんどがコンクリートなど新素材で酒蔵は造られています。
そんな中、現在でも明治から続く土蔵を使っての酒造りは、時代遅れに見えるかもしれません。

土蔵での酒造りは自然の風を入れ、土壁で湿度を調整します。
厚さ50センチの土壁は朝夕入る山風と海風の冷気を調湿すると言われています。
また蔵には家付酵母が住んでいるといわれており、酒の味に関係するかもしれません。
しかし、強い風に吹き曝しになるため、酒造りの職人にとっては、寒さとの戦いがあることでしょう。
この蔵には最新鋭の設備こそありませんが、この地の恵みをありのままに受け入れる文化があるのでしょう。
ですからこの蔵での酒造りは、自然との共存を感じます。

酒造りのこだわり

ふじの井の酒は、新潟の米、水、技が揃った「オール新潟」で醸されています。
原料米には、コシヒカリの三大産地のひとつに数えられる岩船産の「越淡麗」や「五百万石」を使用しています。
三大産地とは、「魚沼」「佐渡」そして「岩船」が挙げられます。
「岩船産米」は新潟県と山形県の県境にあたる岩船地方で育てられています。
生産量は少ないのですが、人気が高いお米です。
岩船地方は、朝日連峰、飯豊連峰に囲まれ、起伏に富んだ地形です。
その特殊な地形故に、山間部は朝日が十分当たり、西日が差し込まないため、朝夕の寒暖の差が大きく、米の旨みが増すと言われています。

そしてふじの井は新発田市を中心とする下越地区で愛飲されています。
蔵人全員が酒造技能士や新潟清酒学校を卒業しており、豊富な酒造経験を持っています。
社員の中には、大吟醸酒などに使う原料米「越淡麗」の栽培も手掛けている農家もいるのだとか。

残念ながらふじの井の認知度は決して高いものはありません。
だからこそこの蔵は、品質の高さとコストパフォーマンスで勝負をします。
“オール新潟”で醸す贅沢な酒をリーズナブルな価格は魅力的で、近隣の住民に愛されている理由なのでしょう。
中でも本醸造酒は、精米歩合60%と吟醸酒並みに磨き込むなど、非常にコストパフォーマンがいい酒です。

高橋留美子さんとの出会い

ふじの井酒蔵を一躍世に知らしめたのは、高橋留美子さんの人気漫画のキャラクターをお酒のラベルに取り入れたことでしょう。

高橋留美子さんは知らない人はいない程の、新潟県新潟市出身の有名漫画家です。
「うる星やつら」「めぞん一刻」「らんま1/2」「犬夜叉」「境界のRINNE」などアニメファンでなくとも世界的な知名度を誇る同氏の作品。
代表作はいずれもTVアニメ化されヒットを記録する超人気の作品です。

2006年に創業120年を機に新社長となった小林社長は、新しい「ふじの井」を象徴するような商品を考えていました。
「日本酒の美味しさを若い世代に再発見していただくために、 日本酒を飲むきっかけとなるお酒をつくりたい。」と以前から懇意にしていた漫画家・高橋留美子先生にコラボレーションを依頼したそうです。

日本酒のイメージ「癒し」に合う女性を探しましたところ、「 めぞん一刻」の管理人さんである音無響子さんを思い浮かんだとのこと。

小林社長にとって響子さんは、憧れの女性であり永遠のヒロインだったようです。
やさしさや包容力をラベルにとお願い致したところ、高橋留美子さんが、季節のお酒に合わせてその都度、描きおろす事になったようです。

ふじの井酒造でも「 とびきりのお酒」を用意するべく鼻息高く製造に励みました。音無響子さんの特別描き下ろしのイラストに、季節ごとに異なる大吟醸を詰めて「大吟醸めぞん一刻シリーズ」というヒット商品が誕生しました。

酒蔵一刻館として春・夏・秋・冬と季節別に、国税局酒類鑑評会にて優秀賞を受賞した大吟醸を、さらに長期低温で熟成させて販売しました。
この長期熟成酒はグラスに注ぐと、淡い黄金色となり美しく輝きます。
香りは、甘く独特の熟成香があります。
口に含むと調和のとれた深い味わいが、ふわりと広がり穏やかな余韻に包まれす。
まさに音無響子さんのようなやさしさと包容力を持つ日本酒と言えるでしょう。

その後、高橋留美子さんのファンや日本酒ファンなど多くの方からの熱い要望があり、「うる星やつら」の「ラムちゃん」のお酒も製造しました。
ラムちゃんと言えば、「~だっちゃ」「ダーリーン」でおなじみの国民的キャラクターですよね。
これも大ヒットをしました。
さらに「らんま1/2」、「犬夜叉」と、高橋留美子作品とのコラボレーションを多く手がけるようになりました。
小林社長が最も大切にしてきたのは、「作品の世界観やキャラクターのイメージに寄り添う」とのことで、ラムちゃんなどの有名キャラクターをお酒にしたらどんな感じになるか、時間をかけて考え抜くのだそうです。

特にラム酒の香りとチョコレートの味が楽しめる甘口のお酒は、ラムちゃんのイメージそのものと言えるでしょう。
今後も色んなキャラクターのお酒ができることをワクワクしながら待ちたいですね。

近年の受賞歴

1996年 第63回関東信越国税局酒類鑑評会 最優秀賞受賞 最優秀賞受賞(首席第一位)
1997年 第65回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞
1998年 第66回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞
1999年 全国新酒鑑評会 入賞
第68回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞
2001年 全国新酒鑑評会 金賞受賞
第72回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞
2002年 全国新酒鑑評会 入賞
第73回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞
2003年 全国新酒鑑評会 入賞
第74回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞
2004年 全国新酒鑑評会 入賞
第75回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞
2005年 全国新酒鑑評会 入賞
第76回関東信越国税局酒類鑑評会 入賞
2006年 全国新酒鑑評会 金賞受賞
第77回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(燗審査の部)
2007年 第78回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(燗審査の部)
2008年 全国新酒鑑評会 金賞受賞
第79回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(燗審査の部)
2009年 第80回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(燗審査の部)
2010年 第81回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(吟醸酒の部)
第81回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(純米酒の部)
2011年 第82回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(純米酒の部)
2012年 全国新酒鑑評会 金賞受賞
第83回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(吟醸酒の部)
第83回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(純米酒の部)
2016年 全国新酒鑑評会 入賞
第87回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(吟醸酒の部)
第87回関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞(純米酒の部)
他多数受賞歴あり

コンテンツ

外部リンク

Page Top