(株)松乃井酒造場

地域 中越
代表銘柄 松乃井
住所
新潟県十日町市上野甲50-1  Gooleマップを見る
URL
http://www.matsunoi.net/

松乃井酒造は、新潟県十日町市に在る酒蔵です。
地元に愛されている正統派の酒を醸しています。

自然と環境

十日町市は新潟県の中央南部に位置しています。
市の中央には信濃川が流れ、十日町盆地とともに河岸段丘が形成されています。
南部には日本三大渓谷のひとつ清津峡、西部には日本三大薬湯のひとつ松之山温泉があります。
日本有数の豪雪地帯として知られており、多い年には3m以上の積雪となり、特別豪雪地帯に指定されています。

世界的に有名になった大地の芸術祭

この地方一帯で人類の活動がかなり古く始まったとされており、河岸段丘上で旧石器時代の石器類が出土しています。
遺跡から発掘された火焔型土器などに土器群は、5,000年ほど前の縄文時代中期に作られたものと推定され、国宝の指定を受けています。

一方、近年は「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が世界最大級の野外アート展として知られ、国内外から多くの観客があります。
1年を通して多くの作品を楽しめ、季節ごとに企画展やイベント、ツアーを開催しており、食事や宿泊もできるのです。
地域の価値をアートとして掘り起こし、地域再生の道筋を目指している野外アート。
それは豪雪、集落、棚田、縄文土器などの文化が、世界的建築家やアーティストの手で新たな文化として生み出されています。
公共機関ともコラボし、なんとトイレや公園、トンネル、宿泊施設などもアートとなっているのです。

織物の一大産地

かつて十日町は京都西陣と並ぶ織物の一大産地でした。
近年は需要の低迷により、生産額はかなり縮小しているものの、その高度な技術は今も受け伝わり、高級着物の産地となっています。

十日町の織物の歴史は、とても古く1500年前にさかのぼります。
馬場上遺跡から紡錘車という糸に撚りをかける道具が見つかったことから、当時より織物が作られていたことが発見されました。

高級着物 明石ちぢみ

時代とともに技術が発展し、江戸時代になると幕府は、この地域の織物である越後縮(えちごちぢみ)を武士の式服に定めたところ、全国に広がりました。
明治時代になると京都西陣の反物と、十日町の技術が応用され、新たなちりめんが完成しました。
それらは「明石ちぢみ」と名付けられ、清涼感のある女性用の高級生地として、全国で知名度を増していきました。

十日町では豪雪地帯ゆえに、空気中の湿度が高く、また盆地特有の気候として、強い風が吹きません。
このような気候風土が、麻織物の原料となる苧麻の生産に最適だったと言います。
また麻織物は、乾燥が苦手なため、十日町のような気候は安定した製品を生み出すのに絶好の条件でした。
特に雪の上に糸や布を広げて行う「雪ざらし」という作業で布を漂白していました。
このような雪を使う技法や、豊かな雪解け水が、染物の発色に優れた効果を発揮したとされています。
そんな明石ちぢみは、昭和になると国の伝統的工芸品に指定されるほどになりました。

「松乃井」の始まり

1894年、十日町の郊外に松乃井酒造場が蔵を構えました。
江戸時代中期から酒造りをしていた古澤酒造場に生まれ育った古澤英保が、分家して創業をしたとの事です。
初代「英保」の名前は襲名として受け継がれ、現在でも銘柄として残っています。
松乃井の名前は、松林と豊かな水源に支えられえた井戸があったことを物語ります。

減少している松林

この地に生息する松林はアカマツ林です。
アカマツ林は生長に十分な光を必要とするため、湿度や日当たりなど立地条件のよい場所でしか育たないと言われています。
昔から里地・里山で重要な役割を果たしていましたが、近年は環境汚染によりその姿が減少しています。
つまり十日町は、環境汚染されていない豊かな自然と環境に恵まれていると言えるでしょう。

井戸は創業当時から横井戸としてあり、現在も使用されています。
一般的に井戸は、地面に垂直に掘って地下水を汲み上げる竪(たて)井戸と、斜面に水平方向に掘る横井戸に分けられます。
酒蔵の井戸は横に長く伸びており、斜面の上にある地層から滴る水が集まった軟水となります。
この横井戸も、特殊な条件が揃っていないと造れない構造です。
このように特殊な条件下で生まれた「松」と「井」こそ、まさに酒蔵を現す象徴となっています。

酒造りのこだわり

この酒蔵のこだわりは、酒に関係している者なら随所に見ることができます。
全て自社精米と言えば分かる人にはピンとくるでしょう。
一般的に精米は米を削るという作業が非常にコストも時間もかかるため外注化されており、酒米はすでに精米された状態で酒蔵に入ってきます。
ところがこの酒蔵においては、その労力をかけてでも、磨きという作業に力を入れているため、精米の内製化を行っています。
このように全量を自社精米を行うことで、その年に合った精米や、自社の設備に合わせた調整ができるのです。
ちなみに長年続くブランドである「英保」の精米歩合は35%です。
ここまで磨くといういうことは、通常は考えれないほどの高精白なのです。

次に洗米という米を洗う作業が挙げられます。
冬に米を水で洗う作業は、職人の負担が大きいため、一般的な酒蔵では機械で洗米を行います。
一方で、機械で行うと米が割れるという問題が起こります。
そこで松乃井では、かつて機械で行っていた作業を、職人の手洗いで行うように変えました。
画一的ではなく、人の目で臨機応変に洗米を行うことで、麹の品質を高めることができました。
これは簡単な事ではなく、まさに秒単位で米と闘うようなものだと言います。
こうしていつしかザルによる米の手研ぎは、この酒蔵のこだわりとなりました。

そのようにこだわった米をゆ、限定給水し、昔ながらの和釜で蒸し上げて、低温長期発酵します。
機械に頼らない麹造りを念頭に、強固なチームワークで挑んでいます。

忍耐と根性

泊まり込みによる、もろみ管理もこの酒蔵の特徴です。
多くの酒蔵では、かつての蔵人制度は、サラリーマン化されています。
しかしこの蔵では泊まり込みによる、寝ずの番でもろみを管理します。
忍耐と根性が必要なこの制度は、他の会社ではなかなか真似できません。
そのためチームワークを良くするための情報交換は活発に行われます。
例えば、蔵人誰もが書き込めるノートを休憩所に設置したりしています。

松乃井酒造Facebookより引用

そられの奮闘の結果、お酒はそれぞれの個性が最大限引き出された造りになっています。
例えば、吟醸酒はすべてふねで搾り、瓶火入れも1回で、瓶貯蔵します。
純米酒は、生酒で貯蔵し、出荷時に瓶燗を行っています。
瓶燗とは瓶を外側から熱することで火入れ作業を行うことで、少しでもフレッシュな味や香りを逃さないための技術です。
その賜物としてでしょうか、2019年には「越後流酒造技術選手権大会」で見事に61場の中から1位を獲得しました。
この選手権大会は、従来の鑑評会のような蔵別の審査ではありません。
蔵によっては、複数の杜氏がいますし、あくまで酒の販売許可が満たされているかどうか審査を行う意味合いがあります。
一方、「越後流酒造技術選手権大会」では商品ごとの審査となり、どの酒が美味しいのかという審査になります。
まさに杜氏のガチファイトの場と言えるでしょう。

しかし絶好調な酒蔵に悲しい別れがありました。
2019年に社長が若くして病気に倒れてしまったのです。
その期から跡を継いだ弟さんを始め、それを支えてきた蔵人たちのチームワークはより強まり、いい酒を造ろうという気概になったのでしょう。

そのような理由で、丁寧な作りと質の高さを地元からはよく認められています。
そのため人気の酒は、地元だけで完売してしまうこともよくあります。
もちろん普通酒も安定した人気を誇り、全国でも日本酒出荷量が減少する中、この蔵は安定した出荷を誇ります。
それに加えて、地元への出荷率は7割もあるのだとか。
このように地元に根差し、愛されているブランドは全国でも稀なのです。

受賞歴

2017年 関信局酒類鑑評会 大吟醸の部 純米吟醸の部 受賞
2018年 関信局酒類鑑評会 純米吟醸の部 受賞
2019年 関信局酒類鑑評会 純米吟醸の部 受賞
越後流酒造技術選手権大会 県知事賞受賞
2020年 関信局酒類鑑評会 大吟醸の部 純米吟醸の部 受賞

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